リンク格差社会 ウェブ新時代の勝ち組と負け組の条件

「ブログを作ったもののアクセスが上がらない」「アフィリエイトを始めたものの売り上げが上がりません」
週末起業フォーラムで認定コンサルタントをやってる私の元には、こんな質問がしょっちゅう寄せられます。

「ブログさえ作れば!」「アフィリエイトさえ始めれば!」と思って始めたものの、最初の段階で思うようにはいかずに苦労する方も多いようです。

そういう場合「コンテンツの蓄積が少ないですね」「もう少しタイトルやキャッチフレーズを工夫しましょうか」「まずは黙って3ヶ月」などとアドバイスをする場合が多いです。
(実際一週間くらいで結果を求められても困る)

しかし、その後1年くらい黙々と続けてもアクセスが上がらない場合もある。
その場合、勢い他人への妬みもともなう場合も多く「俺のページの方が質量ともに充実してるのに!なんであのページの方が!」という口調になる。

そんな場合のアドバイスをどうしたものかと思ってたけど、この本を渡すといいかも。

プロローグより

私たちは、何よりも自分が組み込まれているネットワークの構造を把握しなければいけない。
そして、その特徴を知らなければいけない。
それらを自覚的に分析することによって、自分の取るべきポジション、果たすべき役割、激変に対する備えを理解できるようになる。

きわめて少数の人がなんらかの資源を寡占する状況を「格差」というのなら、世の中は格差を生み出すメカニズムだらけである。 ところが極端な分布を形成する場合、格差を認識するのは案外と難しい。 なぜなら、圧倒的多数の人は、ほぼ同じ程度の資源しか持っていない「負け組」なのだから。

ネットの場合、特に現実社会と違って縁戚関係や地域社会との関係などの強制的な関係が少ないので、同じような趣味で同じ考え方の人が集まりやすいので、余計に同質化しやすく、同じような情報しか持っていない人が集まりそうですね。

さて、このリンクがリンクを呼び、PVがPVを呼ぶような現在のネット社会で生き残る道はというと…
自分がネットワークの中でどの立ち位置でどの役割を選ぶかで決まります。

そうすると、当然情報発信力があるオピニオンリーダーが有利なのは間違いないでしょう。
しかし、本書では専門能力があり情報発信能力があるオピニオンリーダーのみが有利ではないとしています。

ネットワークにおける各人の役割が下記のとおりだとすると

・コネクター クラスター間をつなぐ役
・メイブン 事情通、情報通
・セールスマン 強い説得力の持ち主
・門番 情報を制御する人
・橋渡し役 誰がなにを知っているかを外部に伝える
・調整役 クラスター間の繋がりを有効的に作り出す

この六つの役割のうち、今後注目されるポジションはどこでしょうか。
答えはあえてここでは言いませんが、自分の得意なポジションがどれかを考えてみるのも一興ですね。

この自分の役割を考えると同時に、あるコミュニティに入った場合そこの人間関係(ネットワークの構造)をじっくりと観察することも大事だとしています。

どこの会社でも表向きの役職とは別に「あいつには気をつけろ」的な、お局様やくせものがいたりしますがそれと同じような隠れた構造を見つけるとこですね。
コミュニティの中で「みんなが均一にリンクを持っている」または「一人がリンクを多数持ち、他の人はそれにぶら下がっている」などなどの構造を探し出し、ネットワーク構造の隙間をうまく埋めると、すばやくいいポジションに入る事ができます。
しかし、対立関係にあるグループをつなげるようと暗躍するのは、要注意。
対立するには理由があって対立したり溝があるので、セコセコと自分の立場を良くしようと両方にいい顔をするのは失敗するケースが多いようです。そして両方から嫌われる。


あと、ネットワークは格差などを生む増幅するという性質がありますが、それと同様にゼロはいくつかけても、いくつ足してもゼロという性質もあります。
ネットワークでは、「マイミクになっただけのひと」「オフで名刺交換だけした人」などがこれにあたります。
「人脈はあるはずなのに…」と思ってる方は、この辺のところだけに一生懸命な人なのかも。

新書ということで、ネットワーク理論に関して基本的な事から説明しているし、日本人の著者なので最近の日本のネットの事例が多いのも嬉しい。
その分肝心の「リンク格差とリンク戦略」を読むためには第6章まで読まなければなりませんが、ネットワーク理論の本を色々読んだ方も復習のつもりで読むといいかも。

巻末に、本書中で引用された参考文献の一覧があるのも嬉しい。


今年の正月に情報考学 Passion For The Futureの橋本さんとたつをの ChangeLogのたつをさんと、ポッドキャストで今年1年の予想をしました。

そのときに私は「今年は格差ブログが来る」として、
・多重リンク債務者 (相互リンクをしようとするけど、リンクの価値が違うのでたくさんリンクを張らなければならないけどスペースが無い。リンクの借りを返せない。そして、そのリンクを返そうとしてまた相互リンクを依頼してニッチもサッチも行かなくなる)
・俺俺リンク 「あー俺だけどトップページにリンクして貰える?」
ということを言った様な気がしたのですが(カットされたかも)そんな時代も近いかもしれません。(来ないで欲しいですが)

そして本書では、歴史的にはあまりにも格差が広がった場合には「暴動」「革命」が起こったとしてます。
ネット社会での「暴動」「革命」がどんな形で起こるのかは少し楽しみだったり。

スパムはすでにあるし、「アフィリエイト拒否!ストライキ!」「ブログ更新停止!ストライキ」とかは全然困らなさそう。
平和が一番ですけどね。


 リンク格差社会 ~ウェブ新時代の勝ち組と負け組の条件~ (マイコミ新書)
リンク格差社会 ~ウェブ新時代の勝ち組と負け組の条件~ (マイコミ新書)
江下 雅之 (著)

ブログやSNSはリンクを可視化する装置であるといえる。
多様なリンクを形成できた者は多様な情報が得られるがゆえに、人との交流、ビジネスチャンスといった面で多くの利点を享受でき、逆に、リンクの連鎖に取り残された者は、偏った情報に翻弄されたり、孤立を余儀なくされたりするという、新たな「格差」が生まれつつある。
本書ではリンクの連鎖という視点から、激動の時代に勝ち残るための新戦略を提示する。

●主な参考文献・関連図書

急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則 [SB文庫]
急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則 [SB文庫]
マルコム・グラッドウェル (著),

複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線
複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線
マーク・ブキャナン (著),

新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く
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アルバート・ラズロ・バラバシ (著),

スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法
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