がんばれ!銚子電鉄 ローカル鉄道とまちづくり

銚子電鉄は、銚子市内に6.4kmほどの路線を持つ、ローカル鉄道。
しかし、そんな説明より、「経営難なので、ぬれ煎餅を買ってくださいとお願いした会社」と言った方が、わかる方も多いかも。

【当時の記事】
ITmedia News:ネットで「銚子電鉄を救え」 名物「ぬれ煎餅」に注文殺到

「銚子電鉄を救うために『ぬれ煎餅』を買おう」――ネット上でこんな運動が盛り上がっている。運行ダイヤ維持のための資金繰りに窮し、副業の「ぬれ煎餅」販売で資金を集めようと努力する千葉県のローカル線・銚子電鉄(銚子電気鉄道)を救おうと、巨大掲示板「2ちゃんねる」(2ch)のユーザーなどが次々にぬれ煎餅を購入。注文が殺到し、銚子電鉄は嬉しい悲鳴を上げている。

 「電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです」。11月15日夜、銚子電鉄の公式サイトトップページに、切実なメッセージが掲載された。内容は「法定検査の費用が捻出できず、来年の元日以降、現在のダイヤで運行できなくなるかもしれない。社員一同努力するが、お客様にも『ぬれ煎餅』や鉄道グッズの購入をお願いしたい」というもの。社長と従業員連名の訴えだった。

 点検が必要な車両は、最低でも3台。うち1台は今週中に、残りは12月初旬までに発注する必要があった。費用は1台あたり最低でも200万円。鉄道事業の集客力は一朝一夕には高められないため、素早い現金化が可能なぬれ煎餅販売に力を入れようと決め、公式サイトに15日、その旨を掲載した。

 サイトで銚子電鉄の窮状を知った2ちゃんねらーが「鉄道板」を中心に支援の輪を広げ、関連する板でも伝えられていった。掲示板では、ぬれ煎餅やグッズの購入が次々と報告されているほか、販売店の情報をまとめたり、在庫のある店舗を伝えたり、銚子電鉄を応援するイラストを描いたりなど、さまざまな形で支援が行われている。

私も、鉄道は嫌いではないし、地方に住んでるので地方ローカル線は応援したいという思いから、当時ぬれ煎餅を買おうとした。
しかし、あまりの加熱ぶりに、生産や発送が追いつかなかったのか、注文しようとしたら「注文一時停止のお知らせ」と出ていて、注文を断念した覚えがあります。


その後も、桃太郎電鉄で有名なハドソンが桃鉄号を走らせたとか、公式サポーターができてボランティア活動をしてるとかのニュースをたまに聞き、気になっていた。

そんなところに、銚子電鉄のぬれ煎餅の騒動?やその後の活動をまとめた本が出たと知った。
『がんばれ!銚子電鉄 ローカル鉄道とまちづくり』とタッグチーム:[mi]みたいもん!
[N] 向後功作「がんばれ! 銚子電鉄 ローカル鉄道とまちづくり」


Web上でも断片的な情報は拾えますが、当事者の方からの話をまとまった形で読めるのは嬉しいですね。ツイてます!

長い前置きでしたが、著者は銚子電鉄の鉄道部の次長。

私が気になっていたのはまず、
「緊急報告
 電車運行維持のためにぬれ煎餅を買ってください!!
 電車修理代を稼がなくちゃいけないんです。」
 
のWeb張り紙はその後の騒動を狙ってやったのか、狙っていたならどれくらいの規模を狙っていたという事。

読み始めてすぐにそんな打算的なことを考える余裕などは当時の銚子電鉄には無く。
本当に、切羽詰った状況だったことがわかります。

本当にやるべきことはすべてやって、自分達にできることはなにもない。というくらいに追い詰められています。
経済的にも追い詰められていますが、電車の点検を12月9日までに行わなければならないのに、11月15日に「緊急報告」ですから、時間的にも追い詰められています。
商用車の車検はもちろん、自家用車の車検だってもうちょっと、計画的にやりそうなものですが、つまりそれ位追い詰められていたのでしょう。

そして、追い詰められてHPに「緊急報告」をした結果は、上にも引用したとおり、すぐにネットで大量の支援者が集まります。
この頃までの話は私も表面的なところでは知っていました。

しかし、その後も銚子電鉄には苦難が訪れます。
一難去って、また一難という感じで次々に苦難がやってきます。

一方、そんな苦難の話ばかりではなく、「銚子電鉄サポーターズ」が結成され、資金面でサポートしたり、駅周辺の掃除や環境整備などのボランティアをしたり、2ちゃんねるの有志が吊り広告(釣り広告ではない)を出したりと支援の輪も広がっていきます。

もともとこの銚子電鉄のブームとでも言うべき現象にもネットが活躍しましたが、それが一過性のいわゆる「祭り」で終わらず、継続的に行われていることにもネットが活躍したと、著者は分析しています。

というのも実は1997年ごろにもぬれ煎餅と銚子電鉄はテレビで取り上げられ、2006年ごろと同じくらいの注文を記録します。しかし
p104より引用

そのときのブームは、まさに一過性のものでした。放送から数日たつと問い合わせの電話はみるみる減りました。
テレビの効果は、ほんの数日しか持たなかったのです。

ということで、今回のブームも一過性のもので終わるのではないかという不安があったようです。

ところが

テレビのニュースは大勢の人が目にするものですが、基本的にその日だけのものです。
(略)

インターネットでは、興味を持った人が、さらに情報を調べることができます。ネットで発信した情報は、基本的に残っていくからです。
テレビのニュースを見て、多くの人は忘れてしまっても、興味を持った一部の人はインターネットで銚子電鉄について調べてくれるのです。

そして、ネットの場合であれば、情報を調べる側だった人が、情報を発信する側の人になったりすることもできますし、みんなで相談したりなどのコミュニティを作ることもできますね。

昨今、企業の偽装などの不祥事で、企業に対する不信感が渦巻く中、このように沿線の人々やファンから愛されるのは素晴らしいことだと思う。
地方のローカル鉄道のように沿線人口の減少や車社会への流れの中で生き残るのは大変かと思うが、銚子鉄道の事例は鉄道事業者のみならず、他の業界でも参考になる部分が多いのではないかと思った。

そこに至った背景としては、
・情報をつつみ隠さず誠実にオープンにしたこと
・自然発生的なコミュニティをうまく活用したこと
・銚子電鉄と言えばぬれ煎餅。ぬれ煎餅と言えば銚子電鉄。などのブランド化に成功したこと
などが上げられると思います。

と、自分で書いて、俺が書いた、この話どこかの本のウケウリだよな、と思いました。

うーん。

と、思ったら

「崖っぷち会社」が生まれ変わった3つの方法 ~売り上げが劇的に伸びる勝利のノウハウ!~
「崖っぷち会社」が生まれ変わった3つの方法 ~売り上げが劇的に伸びる勝利のノウハウ!~中山裕一朗 (著)

で、書いてあることそのままでした。orz
(こちらの本も近日中に紹介しますね)


銚子電鉄は鉄道会社、中山さんは紙加工業という全然違う職種ですが、やはり地方の衰退・成熟産業が生きていくには、待っているだけではダメで自分自身から率先して手を上げて情報発信し、能動的に応援してくれるような顧客を作り出し、自らブランド化していく姿勢が大事なんだなと実感。

赤字のローカル鉄道ってのは、赤字になるくらいだから使う人もいないんだし、廃止にすればいいんじゃないの?という見方もあると思う。
私の近所でも鉄道がJRから第三セクターになって、運賃が1.5倍くらいになって、ただでさえ少ない運行本数がさらに減ったときがあった。
そしたら、いわゆる交通弱者の老人や高校生の人たちがもろに影響を受けた。
例えば、老人が運賃が高くなったので、電車にのりずらくなり、病院に通えなくなる。
親が定期代を払えないので、電車で通わなければならない希望する高校へ通えなくなるなど。
(そのとばっちりで、地元に進学を希望してた人が、高校へ行けなくなったりした)

地域の足なんだから、行政がなんらかの補助をするって考えもあるかもしれないが、そんな地方だと行政も当然金がない。

高い・便が悪いから使わない。だから、ますます使わない。そしてますます値上げへという悪循環に陥ってるところも多いと思う。


特効薬と言うのは、なかなか無いのかもしれないし、現実にはみんながみんな銚子鉄道のようにいくとも思わない。

しかし、「こんな事例もあるんだー」というのを知ることは、とても大切なことだと思う。

寺山修司さんの言葉を借りれば「どんな鳥だって想像力よりは高く飛べないのだから」


一冊で、地方鉄道の現状やインターネットの活用事例、まちづくりと鉄道など盛りだくさんな情報を知ることが出来たお得な本でした。


がんばれ!銚子電鉄 ローカル鉄道とまちづくり
がんばれ!銚子電鉄 ローカル鉄道とまちづくり向後 功作 (著)

内容紹介 「電車運行維持のためにぬれ煎餅を買ってください!! 電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです。」

銚子電鉄のホームページにこんな一文が現れたのは、2006年11月15日のこと。
経営難に陥った鉄道会社が、名物「ぬれせんべい」の購入を呼びかけたのです。
すると、どこからともなく購入者が集まり
わずか2週間足らずで、1万件の注文が!

「副業」で販売する煎餅の収益でピンチを乗り切った鉄道会社。
それを支えたものは何でしょうか。

インターネットは「炎上」だけでなく、
人々が手を差し伸べ、行動するきっかけになる。
そして人々をつなぎ、問題を解決することもできる。

銚子電鉄に勤める筆者が、
1年にも及ぶ「ぬれせんべい騒動」の舞台裏と、
まちづくりによる地方鉄道の復活について語ります。