ビジネスマンのための「読書力」養成講座

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小宮一慶さんの「ビジネスマンのための「○○力」養成講座」の第4弾は、
ビジネスマンのための「読書力」養成講座」です。

【過去の3部作】
ビジネスマンのための「発見力」養成講座(2007/9/13)
ビジネスマンのための「数字力」養成講座 (ディスカヴァー携書 20)(2008/2/27)
ビジネスマンのための「解決力」養成講座 (ディスカヴァー携書 (025))(2008/6/15)

小宮さんと言えば、「数字力」や「解決力」で非常に論理的で、そしてお忙しい方です。
そういう方の読書法というのは、どんなものなのか非常に興味がありますね。

さて、そんな小宮さんの読書法は大別すると次の5段階


1,速読 求める情報を探すために、要点を素早く把握するための読み方
2,通読レベル1 最初から最後までふつうに読む読み方
3,通読レベル2 最初から最後まで、論点を整理し、考えながら読んでいく読み方
4,熟読 昼夜参考文献を参照しながらきっちり理解するために読む読み方
5,重読 行き方だのに関する座右の書として何度も繰り返す読み方

読書の目的によって、これらの読み方を自分が本を読む目的やほんのレベルによって切り替えます。

コンサルタントの方だけあって、説明が丁寧でわかりやすい、そして親切。

速読に関しての部分でp68から引用すると


もし、読書の皆さんが仕事でいま、限られた時間の中で大量の読書を要求、つまり速読が要求されているとしたら、あるいは、これからたくさんの知識や情報を速読でえていこうとお考えなら、まずは、その分野の専門書を通読、あるいは熟読し
自分で解釈できるベースをしっかりつくることをお勧めします。
(もちろん、すでに知識ベースのある分野なら、その必要はありません)
速読はその後です。ある一定の知識ベースなしに速読しても、欲しい情報も知識も表面的にしか得られません。

 逆に、ある一定の知識ベースを身につけてから速読をすると、意味が十分に理解できますから、さらに知識ベースが広がり、速読力が増すということになります。さらに、知識ベースを広げる前に、通読レベル2、または熟読で、論理的思考力を高めておくほうが、徐々に有用なことが多いと考えます。「急がば回れ」です。

と、あってさらに図解もして懇切丁寧に説明されています。


端的に「バカなヤツは、速読をしても無駄」とでも、書いてもいいような気もしますが、もっと短く言えば「猫に小判」とか「豚に真珠」とか…
その、結論まで一気に進まずに丁寧に説明されてるのがうれしい。

そしてまとめるときはきちんと(P71から引用)

通読や熟読で、頭を鍛え、論理的思考力を高めて、一定の知識ベースを得てからのほうが、本当の意味で速読を行えるのです。

ビシッ!と決める。かっこいいですね。


次の通読レベル1では、

自分なりの考えをベースに、そこに常によい文章をインプットしては、自分の仮説を検証してみる

自分の経験とそれまでの知識から立てている、いろいろな仮説をどんどん検証しては、また新しい仮説を作り出していく、というプロセスを繰り返すことで、視点を広げ高めていく

というように「時間をかけずに、よい本をどんどん読む」ことがポイントとされています。
しかし、「よい本を読め!」と言われても、困ってしまいますよね。
しかし、本書では小宮さん推薦の本が載っていますので大丈夫。特に、経済、マーケティング、経営、会計の分野の本に重点をおいて紹介されています。


次の通読レベル2からが、「いよいよ」本書の真骨頂。なぜなら、通読レベル2以上が「頭をよくする読書法」だから。
通読レベル2では、丁寧に線を引いたり、メモを取ったり、注も丁寧に読むと言うことですから、一般的にはこれは熟読と言われるものになるでしょう。
このレベルの読書に合うものは、超一流の学者が書いた入門書や一流の経営者が書いた本がふさわしいとのこと。
アブラハム・マズロー
完全なる経営

マックス ヴェーバー のプロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 (岩波文庫)
などをあげています。

確かに、プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 (岩波文庫)などは、じっくり腰をすえて読みたいところ。

ただ、こういう難しい本をいきなり予備知識なしに読むのも大変なので、やはりある程度通読レベル1や速読で基礎知識をつけてからでしょうね。
たとえば、プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 (岩波文庫)を読む前には、訳者の大塚先生が書いた

社会科学の方法―ヴェーバーとマルクス (岩波新書)

や、
マックス・ヴェーバー入門 (岩波新書)
などの解説書を読んでおくとか、
本の中に出てくる
フランクリン自伝 (岩波文庫)

ロビンソン漂流記 (新潮文庫)
を読むなどするとよいかも。
余談ですが、新潮文庫のロビンソン漂流記は

ディスカヴァー社長室blog: 翻訳者の日本語力 編集者の日本語力 ●干場
翻訳通信の中の吉田健一訳『ロビンソン漂流記』で、「名訳」とされています。

通読レベル2で、「完全なる経営」とか「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 (岩波文庫)とか出てきたら、「熟読」は何をどのように読むんだ!?
と言う感じになりますが、「熟読」では、主に自分の専門分野の本を「きっちりと論理だてて読むこと」となっていますので、ちょっと一安心。
専門分野の本なら熟読せざるを得ませんからね。

でも、相当ヘビーな(内容的にも分量的にも)本を読むんだろうと思ったら、ここで事例として紹介されていたのは
会社法入門 (岩波新書)神田 秀樹 (著)
と、分量的には少々控えめ。
しかし、読み方は精緻を極め、丹念に法規集条文集を参照し、読み進めます。

最後の重読は、人生の指針ともなるべき本を、何度も何度も繰り返し読むことです。
意味を知るだけではなく、意識を高めるための読書としています。


5つの読書の段階を駆け足で、振り返りましたが、さすがというかなんというか深みがありますね。

あと、後半の方に、小宮さんは「月に4,5冊しか本は読まない」とあるけど、これはあんまり真に受けない方がいいかも。
と、言うのは別に嘘を書いていると言うことではなく、小宮さんは新聞も「マニア」と称するほど丹念に読んでますし、ビジネス雑誌も当然たくさん読んでますし、なにより、コンサルタントさんですから、生の経営者に接する機会が圧倒的に違います。また、これまでの蓄積も当然ありますから、そういう方が「月に4,5冊ですよ」というのを真に受けて、「小宮さんクラスで4~5冊なら、俺は2~3冊だな」とは、いかないでしょう。


巻末に、ブックリストがあり、経済、経営、会計、マーケティング、ヒューマンリソース、私的おすすめの各分野のおすすめが載っていますので、「何を読んだらいいかわからない」という方にもおすすめです。

私も、読んでない本がたくさんあったので、「まだまだ読まねば!」と思ってちょっとうれしい。

読むことが目的になってはいけないと思いつつも、涼しくなってきたので、読書してその後思索にふけりながら散歩するのが最高に楽しいです!読書最高!

それにしても、ディスカヴァー携書は、読書に関しては、この本といい
人間力を高める読書案内三輪 裕範 (著)
といい通好みな感じ。

シリーズは違うけど洋モノでも、T・バトラー=ボードン の
世界の自己啓発50の名著―エッセンスを読む
世界のスピリチュアル50の名著 エッセンスを知る
世界の心理学50の名著 エッセンスを学ぶ
世界の成功哲学50の名著

小宮さんが、100回以上読んでる
中国古典の知恵に学ぶ 菜根譚

アランの幸福論
バルタザール・グラシアンの 賢人の知恵

など、渋めの本もけっこうある。
上にあげた本だけで、かなり思索にふけれそうだ。


思索にふけると言えば、この本「ビジネスマンのための「読書力」養成講座」の帯の

読書に投資する時間の価値を∞倍に引き上げる90分

という文章の「∞倍」という言葉だけでも90分くらいは余裕でフロー状態に入れそうな感じ。

「∞倍」とは深い。

ここで、「んっ?」と思わせる罠なんだな。

見事に釣られたかも。

そんな余談はさておき、「何冊読んでもどうにも頭がよくなった気がしない」「表層的な知識は増えたような気がするが、実は体系的にはわかってないのかも…」と、お悩みの方にお薦めの本です。

自分も、もっとじっくり読まねば!と心を新たにしました。

【参考記事】ビジネスマンのための「数字力」養成講座:[俺100]

ビジネスマンのための「読書力」養成講座
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