幸せを科学する―心理学からわかったこと

幸福に関して、心理学の専門家が書いた書籍ですが、エキサイトするくらい面白かった。
端的に言えば「幸福の科学」なんでしょうが、やはりそういうタイトルはつけづらいですよね。何となく。

さて、古来より幸福に関して哲学者が色々議論してきました。そして、今に至るまでも、幸福に関する書籍はたくさん出ています。

私も、何冊か読んだことがありますが、しっくり来るものもあれば、よくわからないものもあったり。そういう疑問のかなりの部分がこの本で氷解しました。

まず、幸福の感じ方。「○○ならば、幸福」というのが民族性お国柄でかなり違う。

たとえば、p5あたりから、幸福に関しての文化の違いを引用してみると


・アメリカの大学生 理想の人間像
明るい人、社交的な人、独立心の強い人

・日本の大学生 理想の人間像
やさしい、尊敬されている、愛されている

・ドイツ生涯発達心理学者 ボール・バルテス
「否定的感情をたくさん経験してきた人が、人生の終わりには英知を備えるようになる傾向があり、アメリカ的な肯定的な感情ばかりを追っている人間は老年期に英知を備えることが難しい」

・フランスのインテリ
幸福の追求ばかり考えている人間は馬鹿で浅はか。幸福感は慎重な議論に値する問題ではない。

・フランス 小説家 ギュスタプ・フローベル
「馬鹿さ、身勝手さ、健康が幸せの三大条件。ただし、馬鹿さがなければ他の条件は無意味」

・韓国 幸福の総量に限界がある。 一生の間の幸福には限りがある。
他人が幸福だと、自分の幸福が吸い取られる。

・ロシア人 幸せは、無垢ではかないもの。幸せは子どもだけが感じる感情

「アメリカ人 ハブ・ファン(楽しんでね)」「日本人 がんばれ!」


かなり、文化によって差がありますね。
特に、インドに至っては

・インドの中年女性 自分の人生に満足しているか? 回答:「それは夫に聞いてくれ」

日本でも、「夫の幸せが、私の幸せ」「子どもの幸せが私の幸せ」という女性もいますが、それでも自分で回答しますよね。
お国柄によってかなり幸福に関して違うもんですね。

さらに、ほぼ単一的な文化の日本においても、県民性や地域性というものも存在します。

まして、個人の性格がそれぞれ違うとなれば「幸福論」は、人間の数だけ存在することになります。

そう考えれば、「自分が幸せと感じればそれでいい」のかなと思ったり。そう考えたら楽になりました。別に、苦しんでたわけじゃないですけど。


それにしても、興味深い話は色々あるもので。


●悩みが話せる友人がいると幸せ?
特に女性の場合は対人関係が幸福度の中の重要なファクターとして上げられるらしい。たとえば、「悩みを相談できる友人がいる」と、幸福度が高いらしい。男はあんまりそれは関係ないみたい。

ただ、こういうので難しいのは「悩みを相談できて幸せ!」って、思うようだけど、そもそも、悩みがある時点であまり幸福でもないと思う。でも「二人のイケメンから交際を申し込まれてるの」とかそういう悩みもあるからねー。

●不幸になりやすい人
・目標が利益背反 「会社でバリバリ仕事して出世したい!」と「家庭では良い母親で愛情たっぷりに子育てしたい!」は、両立はむずかしい。のでそういう人生の目標の方向性が違う人は悩みが多い。「昼寝こそ幸せ!」と「核家族で専業主婦!」なら、悩む確率は少なくなる。

ちなみに、ラテン系の人は「人生の目標が達せられたら幸福ですか?」と質問すると「目標?目的?、なにそれ。おいしいの?」的な反応らしい。極端に誇張すればね。

●意外な法則
「じっくりと商品を吟味して選ぶ人は、幸福度が低い。しかも、その選択に後悔することが多い」それに対して「適当にこの辺のでいいや!」と適当に買い物する人は幸福度が高い。皮肉なもんですね。

●幸せになる方法
・自分に直接無関係な事でも幸せになれる サッカーやオリンピックで自国が好成績。
・同じ1万円ならモノより体験型消費 モノは劣化するが、思い出は美しくなる
・感謝する事が多いと幸福 感謝の気持ち・感覚は忘れないようにメモする
・おしつけがましくない親切 親切にすると幸福度アップ!

●結婚するから幸せ?
意外というか当然というか、幸せな人、幸福感を感じやすい人は、結婚率が高いらしい。
単純な話、笑顔でニコニコしてる女性はモテるのかもしれませんね。
深刻な悩みを抱えてそうな人には近づきづらいですし、まして結婚の対象には厳しいでしょうね。実際。

なので、「結婚したら幸せ!」というよりは「幸せな人は結婚!」みたい。

ちなみに、「新婚」の効果は心理学実験よると3ヶ月らしい...

●若いときに幸せだと...
安易に幸福感を感じる人は、そこそこで終わるらしい。
18歳の時に幸福感を感じてる人が、必ずしも15年後に高収入ではない。
現状に安易に満足するのはよろしくない。

●社会的成功と本人の幸福度とは必ずしも一致しない。
衣食が満たされていると、本人の気質による要素が大きい

●幸福は遺伝する
顔や背格好、性格も遺伝するので、幸福に関する感覚も親からかなり遺伝するらしい。
クチぐせや行動も一緒にいると似てきますしね。

【最後に】
スピリチュアル系な本を読むと「物事には良いことも悪いこともありません。宇宙や神は、善悪の判断はしません。ただ、現象があるのみです。それをどういう出来事と判断するかはあなたの心なのです」的なことが書かれています。衣食が満たされていれば、本当にかなり深刻な事(例えば、突然の肉親、子ども、配偶者の死など)以外は、幸福に関する文化の違いのところを読んでたらどうでも良いことなんだと思えるようになりました。

しかし、先進国と言われる日本に置いてさえ、昨今必ずしも、現在、未来において衣食が保証されるような経済情勢にはないわけで...

最低限の衣食が満たされていて健康なのにうだうだ言ってる人は、「不幸になりたい病」か「成長願望が強い人」ですね。前者だとずっとうだうだ言ってるでしょうが、後者だと大成長を遂げるかもしれませんね。

あと、若いときに苦難を経験すると、その後の苦難にも耐えられる傾向があるらしいので、「若いときの苦労は買ってでもしろ!」は、本当かも。しかし、小さな不幸が大きな不幸を呼ぶかもしれないのが怖いところ。

まあ、気楽にいこうぜ!


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幸せを科学する―心理学からわかったこと (単行本)大石 繁宏 (著)

内容 この本を読めば幸せになれるほど、人生は甘くない。しかし、幸せへのヒントはたくさんある。幸せに関する最新の心理学研究の成果。

著者略歴
大石 繁宏
1993年国際基督教大学教養学部心理学科卒業後渡米。

1995年コロンビア大学カウンセリング心理学修士号、2000年にイリノイ大学社会・人格心理学博士号取得後、2000年から2004年までミネソタ大学心理学部で助教授を務める。2004年より2006年までヴァージニア大学心理学部助教授、 2006年より同大学准教授。

2006年アメリカ心理学会より「ディスティングイッシュト・サイエンティスト・レクチャーシリーズ」の講師に選ばれる。現在、学会誌『パーソナリティ・アンド・ソーシャルサイコロジー・ブレティン』の副編集長。また『ジャーナル・オブ・パーソナリティ・アンド・ソーシャルサイコロジー』ほか、数々の社会心理学、文化心理学、パーソナリティ心理学の学術誌の編集委員も兼任している



●目次
幸せと理想の人生
幸せとは何か?―西洋哲学の考え方
幸せとは何か?―東洋哲学の考え方
文化と幸せ―文化心理学からの視点
幸せをどう測るのか?
幸せの自己評価過程
経済と幸福感
運と幸福感
結婚と幸福感
友人関係と幸福感
性格と幸福感
幸せになるための介入
幸せの効用?
最適な幸福度とは?
幸せな社会とは?