ブログをやっていると、「文章を書くのが昔から好きなんですか?」「文章を書いていると楽しいんでしょうね」と聞かれることも多いですが、実はまったくそういうことはなく、本を読むことは昔から好きでしたが自分で文章を書きたいと思ったことはとくにありません。
2003年から続けているこのブログのきっかけも、Movable Typeをインストールしてみたいということだったりします。今でも記事を更新するときは七転八倒しています。
文章で難しいのは、「タイトル」と「書き出し」と、よく言いますが、幸い私のブログではタイトルは書籍のタイトルそのままであることが多いので、それで悩むことはほとんどありません。やはり難しいのが書き出しです。
お金を払って購入した雑誌や書籍と違い、無料のブログにおいては、書き出しを工夫しないとあっさりとスルーされてしまいます。RSSリーダーや検索エンジンでは、冒頭の部分のみが表示されることも多いという事情もあります。
一方でブログともに日常使っているtwitterにいたっては、書き出しで悩むことすらなく、思いつくままに気軽に書き込んで楽しんでいます。 気軽に書き込めるからこその楽しみはありますが、たくさん書き込んだとしても文章力の向上にはつながらないでしょう。
本書は、そんなデジタル時代における文章術を芥川賞作家の藤原智美先生が教えてくれる本です。芥川賞作家の方から文章術を習う機会はそうそうないですが、書籍ならそれを可能にしてくれます。書籍ってありがたいですよね。
本書で僕が参考になったのは、文章の書き方・表現の技法などももちろんですが、いかに毎日一定のクオリティで一定の量の文章を生産するかという部分。生産と表現しましたが、工業製品のように文章も量産できればいいなあと日々夢想しております。
結局、一定のクオリティで一定の量を毎日生産するためには、当たり前ですが、毎日一定の量を書き続けることが必要です。そんなことは誰でもすぐにわかるわけです。「通帳の残高を増やしたいです」という問いに、「入金を増やしましょう」というくらいに当たり前の話です。問題はその書き続けることをどうやってそれを気分よく続けるかという部分。
そこに職業作家としての試行錯誤の結果のノウハウがあります。
・音楽をかける
・ネットを遮断する
くらいは割と思いつきそうですが、なるほどと思ったのが
「文章を書くエンジンを常に暖めておく」
ということ。
文章を書いていて、行き詰まったり、ある程度の区切りに達すると、気分転換と称して、散歩に出かけたりついついネットサーフィンに興じたくなりますが、そうすると頭の中の文章を書く部分が冷えてしまう。結果、休憩明けに文章を書こうと思っても、なかなか乗り切れない。
p48から引用します。
文章に行き詰まって抜け出せないとき、私は別のジャンルの文章を書くことで気分をリフレッシュさせます。小説を書いていて筆が止まってしまったら、エッセイを書いてみる。仕事の報告書を書いて行き詰まったら、別の企画書を書いてみる。 大切なのは書く行為から離れずにいることです。ジャンルは違っても、文章を書くエンジンを暖め続ければ次の一行が浮かんでくるように思います。
個人的には、この部分を読んだだけでも元は取れたなと思います。
また、読むに耐えないような文章でmixi日記を書いていた人が、みるみる間に文章がうまくなっていった話には希望が持てた。その理由には2点ほど考えられるのですが、どういう理由かは本書でご確認を。
文法やてにをはの話であれば、予備校の現代国語の先生の本でも学べますが実際に文章が上手くなる方法や書き続ける方法となれば職業作家を長く続けている人から学ぶのが一番だと思いました。
文は一行目から書かなくていい - 検索、コピペ時代の文章術 藤原 智美(ふじわら ともみ) (著)
出版社: プレジデント社
いま、何をテーマに、どのように書けば、人の心を動かす文章になるのか。 小説から、ネット上の文章まで。ノンフィクション作家でもある著者が、プロとして身につけたテクニックを紹介。 同時に、電子メディア時代における「書く」ことの意味を考察したノンフィクションでもある。著者は、ケータイ小説をはじめ、デジタル化された文章がもたらすさまざまな弊害を指摘。
コピペができないのは仕事ができない証拠との社会的意識が生まれつつあることを危惧し、
ランキング依存によって、書き手の直観力や嗅覚が衰えることに警鐘を鳴らします。電子書籍の本質とは、キュレーションとは。そして出版界の縮小のスパイラルの末、誰が市場に残るのか・・・。
伝わる文章を書くことだけでなく、書くという行為そのものについて、思いを巡らすための一冊。
【目次】
第1章 あなたは9歳の作文力を忘れている
文章の本質は「ウソ」である/プロはこうやって文章力を鍛える/小説とノンフィクションの違いとは/
ボキャブラリーは本当に必要か/自分にしかわからない感覚を文にするetc第2章 プロ作家の文章テクニック
すべてを書いてしまわず、次の日に繰り越す/鬱、薔薇......難しい漢字は記号にすぎない/
短い文章には「メイン料理」だけを選ぶ/「余談だが」「ちなみに」には手を出すな/ヒッチコックはこうしてアイデアを捨てたetc第3章 名文の条件とは何か
名文かどうかは、風景描写でわかる/著者の顔が見える作品は、つまりはダメな作品/
つくり話こそ、小道具が必要/文章は、真似から始まる/個性の正体とは何かetc第4章 日常生活で文章力を磨く
ワープロか、それとも手書きか/朝には朝の、夜には夜の誘惑が/1、2行の日記でも文章はうまくなる/
メモにも必ず、年月日を記入する/料理のレシピの難しさとはetc第5章 検索、コピペ時代の文章術
コピー&ペーストが文章を殺す/ランキング思考で直観力が衰える/キュレーションとは何だろう/
ネット辞書との付き合い方を考える/縮小のスパイラルの末、誰が残るかetc第6章 書くために「考える」ということ
数字のウソに気をつけろ/その図は文章にできますか/記事に主張が盛り込まれているか/
書きたいテーマが見つからない/心に引っかかったピースをすくいあげるetc