快適な場所から離れ、失敗することをいとわず、不可能な事などないと呑んでかかり、輝くためにあらゆるチャンスを活かすようにすれば限りない可能性が広がる
著者のティナ・シーリング氏はスタンフォード大学工学部でのアントレプレナーセンターで技術者や科学者に、アントレプレナーシップ(起業家精神)とイノベーションを教える講座を担当しています。
googleやYahoo!、シスコ、サン・マイクロシステムズなどそうそうたるIT企業の創始者などが学んだスタンフォード大学のアントレプレナーの講座はどんなものかと興味を持って読み始めました。また、そもそもそういうアントレプレナーシップは教育で学べるものなんだろうか?という疑問もあったり。
しかし、読み始めたら、一般の日本の大学の研究室の教育のようなものを想像していたら全然違ってびっくりでした。
日本の学校では「これを勉強・研究しておかないと、社会に出てから困るぞ!」みたいな感じで教育すると思うのですが、スタンフォード流はは真逆ですね。
スタンフォード大学流では「困ったことは起こらない!」「問題が起きたときは、むしろビジネスチャンス!」といった感じで、斎藤一人さんや松岡修造さんばりのポジティブシンキングです。
困ったことからできるだけ逃げようとしたり、困ったことは先延ばししてうやむやにするという日本流に慣れている僕には非常に新鮮でした。
紹介されている演習の一部を紹介すると、
・封筒に入った5ドルを2時間でできるだけ増やすにはどうしたらいいか?
・クリップを4時間以内にできるだけ価値のあるものに変えるにはどうしたらよいか?
・↑の実験のクリップを、ポストイット、ゴムバンド、ミネラルウォーターに変えてみる
・生活の中で使っている製品をランダムに選び、その製品がもっている問題点を解決する
・従来の売れないサーカス団を大人気にする方法を考える シルクドゥソレイユを後で見せて比較検討
・↑の演習を色々な業界で
このような問題解決の演習を学生が学ぶ過程で、当初は思いもしな方アイデアが出ることもしばしばで、柔軟な発想をはぐくむカリキュラムが整備されているんだなと再認識。
もちろん、やみくもにアイデアを出してポジティブシンキングで突き進んでいくだけではありません。
他人から学ぶ事で、失敗の確率を大幅に下げられるということです。自分ひとりで何もかも見極める必要はありません。最善の選択をするには身の回りで得られるデータはすべて集めるべきです。そして先人の知恵に学ぶ事です。何か選択するときに必要なのは、身の回りに、数千と言わずとも数百のお手本を探すことだと言えるでしょう。
この本の中に出てくる事例のかなりの部分が、巻末の註の部分にURLがあることにより、インターネット上で公開されていることも知りました。本書や本書の巻末のURLをたどっていくことで知識としては、スタンフォード大学のアントレプレナーの講座の中のかなりの部分を知ることができると思います。
しかし、IT技術の発展により知識の習得は著しく容易になる一方で、実際にスタンフォード大学のアントレプレナーの講座を受けたときの場の共有や人脈といったものが相対的にますます価値を増すのかなと思いました。
以前、「八戸大学・八戸短期大学総合研究所 第2回起業家養成講座」を見学させていただいた時にも同様の印象を持ちました。
【参考】八戸大学・八戸短期大学総合研究所 第2回起業家養成講座と「ふるさたーんバレー」ネットワーキング:[俺100]
【参考】八戸大学・八戸短期大学総合研究所
知識がみんな同じ程度に高止まりすれば「こいつはこういうことをしてる人だ」「こいつは信頼に足る奴だ」などという人に知られているネットワークの広さが鍵になっていくんじゃないかな。
本書には、ところどころに起業家の方の言葉が差し挟まれていますが、そちらもやる気を奮い出してくれますね。
サンマイクロシステムズ共同創業者 ビノッド・コースラ
問題が大きければ大きいほど、チャンスも大きい。対して問題のないものを解決しても、誰もカネを払ってはくれない
p40KPCBランディ・コミサー
起業家精神とは世の中にはチャンスが転がっていると見ること
一度も挫折したことのない人を見ると、経験から何かを学べたのだろうかと不思議に思う
p40ガイ・カワサキ
カネを稼ぐより意義を見つける方がいい
p47 google共同創業者 ラリー・ペイジ
できないことなどない、と呑んでかかることで、決まりきった枠からはみ出よう
p82 ガーデン・ロスコフCEO デビッド・ロスコフ
並外れた業績を達成した人々の最大の見方は、他の人たちの怠慢である。
p104
ハンサムでもなく、面白いわけでもなく、頭が良いわけでもなく、魅力的でもないがモテ男
単純なことだよ。魅力的な女性がいたら、片っ端からデートに誘っているんだ。なかにはイエスと言ってくれる娘もいるからね
p118
ジェフ・ホーキンス
自分は、自分の会社と一体ではないし、製品と一体でもない。往々にして同一視しがちだが、失敗したからといって自分が失敗したわけではない。あるいは成功したときですら、自分の成功ではない。会社や製品は失敗することがあっても、自分が失敗者なのではない。
p176 ガイ・カワサキ
常に高潔であろうとすべきです。高潔な人は、お返しができるとは限らない人を助ける。当然ながら、自分の力になってくれそうな人に親切にするのは簡単だ。だが、高潔とは絶対に自分の力になれないとわかっている相手の力になることだ。カルマと呼んでもかまわないが、心が広く他人の力になる人は、相手もまたお返ししたいと思うものだ。
p188 著者 ティナ・シーリング
光り輝くチャンスを逃すな!
あと、最後の最後に「最後の授業」的な展開があって思わず「やられたー」という感じでした。(ちょっとネタバレっぽくてすいません)
20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義 (単行本)
ティナ・シーリグ (著), 高遠裕子 (翻訳)
いくつになっても人生は変えられる!「決まりきった次のステップ」とは違う一歩を踏み出したとき、すばらしいことは起きる。起業家精神とイノベーションの超エキスパートがまとめた「この世界に自分の居場所をつくるために必要なこと」。
最後の授業 ぼくの命があるうちに DVD付き版 (ハードカバー)
全米600万人が涙した、ある大学教授の「最後の授業」今日の次には明日が来て、その先にも新しい日が待っている。そうやって、当たり前のように人生は続いていく。しかし、これから先もずっと続くと思っていたその人生に「終わりの時」があると知ったとき、あなたは何を考えるだろうか――。
本田
書評ありがとうございます。版元の阪急コミュニケーションズ宣伝部のものです。このたび弊社より同じ著者による『未来を発明するためにいまできること』が刊行されました。ぜひ献本させていただきたく送付先をお教え願えませんか。よろしくお願いいたします。
http://books.hankyu-com.co.jp/_ISBNfolder/ISBN_12100/12110_stanford/stanford.html