大手建設コンサルタント、パシフィックコンサルタンツに勤務する著者が教える問題解決の技術。
この建設コンサルタントという職種はあまりなじみのない方も多いかもしれません。
しかし、その知名度とはうらはらに公共工事などの調査・計画・設計などなどの分野で欠かせない存在です。
その技術力の高さは、著者の横田さんがお勤めのパシフィック・コンサルタンツを例に取ると、理工系の資格の最高峰と言われる技術士の資格取得者は
有資格者数 | 会社情報 | PCKK
社員数 1,325人(2008.4.1現在)
技術士 815 人
ということからもおわかりいただけると思います。
そして、この社員数には当然、事務方や営業の職員数も含まれてますので、純粋な技術部門のスタッフの資格取得率を考えると相当なパーセンテージになりますね。
で、技術力が高いから、つんけんした冷血な人が多いかと言えば、そんなことはない。人柄も温かい人が多い。
建設コンサルタントの仕事の相手は、官庁などのプライドが非常に高い人が多いんです。だから、自分の方がモノを知っていたとしても「あなた、こんな事も知らないんですか?」なんて事は絶対に言わない。「こいつバカだな。」と思ったら、優しい感じでいかにも偶然風に「そういえば、私が勉強のために作った資料がたまたま鞄に入ってまして、それをチェックしていただければと思うのですが~」なんて感じで、相手のプライドを傷つけないように優しくレクチャーしてくれます。
そんなわけで、私は公共工事の設計を発注する仕事を以前していたこともあったのですが、このように優しくて頭の良い方にずいぶん助けられたものでした。当時は、「ずいぶん偶然いろいろなモノを持って歩いてるな」と、単純に思っていましたが、私がバカだったんです。ごめんなさい!
本書では、その建設コンサルタントの優秀な(技術士を二部門も持ってる!)技術者の問題解決の手法を伝えています。
本の帯には「10年間で2000億円のコスト削減!」の文字が躍っています。
まず、著者の普段活躍している公共工事の設計ではでは「安かろう、悪かろう」などと言うことは絶対に許されません!絶対に!です。
しかも、公共工事の設計手法というのは、かなりの部分が公共工事の設計基準でがちがちに決められていますからオリジナリティもあまり出せない。
そのコスト削減と構造物の品質の保持という相反する事をいかにして実現したかには興味津々ですねー。
ありがちな手法だと、付帯工事を別工事にするなどして、見かけ上の予算を削減することでしょうか?こういうのは、本末転倒で全然問題解決になってないですね。
そこで、著者が取った「問題発見+解決メソッド」が「ファンクショナル・アプローチ」です。
元はGE社で開発され、主に製造業を中心として発展してきた手法とのことです。
一見、製造業と建設業では、あまり関係がなさそうで違和感を感じるかもしれませんが、建設業はすべてのものを飲み込んでしまう懐の深さがあります。
大型構造物の設計や施工では、土木工学はもちろん、電気工学、機械工学、などの技術系の学問はもちろん、景観などへの配慮では、心理学も適用しなければいけませんし、計画段階から施工段階での近隣への配慮では社会学、などの学際的な知識と経験が必要になります。そう言った意味で、製造業と建設業の壁などたいした問題ではない。
また、思えば日本の産業の発展の歴史もこのように、懐を深くして異業種や海外などから技術を貪欲に学び取り入れた結果なのかもしれませんね。
「ファンクショナル・アプローチ」に話を戻すと、すべてのモノには機能があり、その機能に着目して問題解決を図るという手法ですね。
例えば、台風などで護岸が決壊し、橋も流されたとします。そうなった場合、当然現状復旧をまず考え、そして今後同じような災害に遭わないために、さらに丈夫な橋や護岸を作ろうとします。そして、その丈夫な橋や護岸をより安全によりコストダウンした工法で作ろうとするのが従来のアプローチです。
しかし、そこを一歩上の視点で考え「そもそもこの橋はなんのためにあるのだろう?」「この護岸は決壊したけど、直す必要はあるのだろうか?」と、そもそもの機能に立ち返って考えるのが、ファンクショナル・アプローチです。
そうすれば、「実は、昔は炭坑があったからこの橋を使う人も多かったけど、最近は廃村も同然だね」とか「護岸も別に人も住んでないし、畑もあるわけじゃないし、そんなに頑丈じゃなくてもいいんじゃない?」と新たな視点が得られるかもしれません。
そのような、「そもそもこの問題はなんなのか?」「そもそも問題はあるのか?」という発想で問題を解決していきます。
そして、その効果がもっとも発揮されるのが、計画段階だったり、物事があまり進んでない時期ですね。
かなり、物事が進んでからだと、コスト削減も方向性の見直しも難しいですからね。
その前段階では、会議がたくさん開かれると思いますが、本書ではその会議を使った問題解決の手法に多くのページが割かれています。
ファンクショナル・アプローチは次の4つのステップで進んでいきますが、
「準備→分解→創造→洗練」の手順で考える
[ステップ1]準備……ツール、心構え、手順、対象を確認する
[ステップ2]分解……問題を含む全体をファンクションに分解し、再構築する
[ステップ3]創造……ファンクションを発想の原点にし、アイデアを創造する
[ステップ4]洗練::創造されたアイデアを評価しながら磨きあげる
面白いと思ったのが、ステップ2の分解の
分解したパーツを「名詞+他動詞」で表現する
ですね。
分解したパーツからファンクションを抽出する際に「名詞+他動詞」で表現するそうですが
「会議の計画」を例に取ると
会議の計画 → 参加者の予定を調べる、開催日を決める、会議室の空きを調べる、会議室を押さえる、・・・
と定義します。
名詞は具体的な言葉を、動詞は他動詞で抽象的な言葉をそれぞれ選びます。 なぜ、名詞を具体的にするかというと、機能を絞り込むためであり、計測可能にするためです。目に見えるモノ、かぞえられるものなど、固有の名称を用います。動詞をなぜ他動詞にするかというと、他に対しての作用を及ぼすことを表現するためです。また、なぜ抽象的にするかというと、人の感情や作業の方法などを限定したり示唆したりすることを避けるためです。抽象化すればするほど本質に近づきます。
この部分5ページくらいしかないのですが、200以上もの他動詞が例として載ってたり、図表も豊富に載ってますが、この部分は深いですね。機能を抽出するのに計測可能な名詞+他動詞で表すなんて、全然知らなかったし、さらに深く知りたいと思った。ちなみに、著者の横田さんが公共工事でこの機能を抽出する際には200~300も抽出するそうです。気が遠くなりますね。
このように、今までの「問題解決」とはひと味もふた味も違う、問題解決の技術ですが、幸か不幸か公共工事の話は全然出てきませんし、数式も出てきません。なので、特に文系の方でも全然問題なくなじめるかと。
というか、「名詞+他動詞」などは、むしろ理系の方の方が戸惑うかもしれませんね。
本書は、小手先のテクニックやノウハウの書と言うよりは、生きてく上での視点を変える哲学書という趣もあります。
小手先のテクニックやノウハウでは、絶対に公共工事で10年間で2000億円ものコスト削減は不可能です。
(それが通用するなら、いったい今まではなにを…)
表現された結果だけを見て、表現された結果から考えて、表現された結果を変えようとすることは、まるで「モグラたたき」のようなものです。「ひたすら続くその場しのぎの作業」です。このような繰り返しには、もう終止符を打ちましょう。
本質が見えれば、結果に惑わされることはありません。結果そのものには意味がないことが分かっているからです。本質を見て、本質から考えて、本質から変えようとすることが、とても大切なことです。 これこそが、ファンクショナル・アプローチの最大のメリットです。
なんというか、随所にちりばめられた言葉がいちいち深い。
こういう言葉を自分でも言ってみたいものだ。
「ファンクショナル・アプローチは羅針盤」という言葉に続いては
羅針盤自体は小さなものかもしれませんが、どんなに大きな船でも必ず必要なものです。
うーん。これは、こっそりいただこうかな(笑
かっこいいですよね。
最近「問題解決」と、名のつく本はたくさん出ていますが、ひと味違う問題解決の本やワンランク上の問題解決の本を探してる方におすすめです。
あと、本書の発刊を記念してAmazonキャンペーンをやっています
『ワンランク上の問題解決の技術』(横田尚哉)
7月22日(火)~23日(水)キャンペーン開催
特典1 アイデア発想テクニック集
特典2 進むべき道チェックシート
特典3 (活用編)音声ファイル
(一回の注文につき、特典はひとつ)
詳しくはリンク先で確認してみてくださいね。
キャンペーン期間中に購入すると、本書が「ワンランク上に問題解決」するかもしれません。
それにしても、本書も出版社の解説ページもAMAZONのページも、隙がない。
「著者プロフィール」「書籍の内容」や「目次」はもちろん完璧に書かれているし、「帯コピー」も「袖コピー」も完璧だ。抜かりがない。
完璧すぎて、目次なんて全部コピペするのも、はばかられるほどだ。
ちゃんとした会社だからと言えばそれまでなのかもしれませんが、404 Blog Not Foundの中の人のチェックも厳しいしなぁ。
【参考】
・404 Blog Not Found:「これ、ブルーバックスじゃないんだ」 - 書評 - iPS細胞
・404 Blog Not Found:ブロガーの支持を集めて10万部! 成功者から秘訣を学ぼう
ワンランク上の問題解決の技術《実践編》 視点を変える「ファンクショナル・アプローチ」のすすめ横田 尚哉 (著)
「外資系コンサルやMBAホルダーによる問題解決本に飽き飽きしていませんか?」
「学校で教わる教科書のような理論で、本当に問題は改善されましたか?」
本書は、10年間で総額1兆円の公共事業を扱い、2000億円を超えるコスト縮減を実現した“カイゼン”のプロフェッショナルが教える、
ワンランク上の問題解決技法「ファンクショナル・アプローチ」の実践ガイドです。
1章 ワンランク上の問題解決とは
2章 【実践】ファンクショナル・アプローチ ステップ1 準備
3章 【実践】ファンクショナル・アプローチ ステップ2 分解
4章 【実践】ファンクショナル・アプローチ ステップ3 創造
5章 【実践】ファンクショナル・アプローチ ステップ4 洗練
6章 日常をファンクショナル・アプローチで考える
終章 ファンクショナル・アプローチは羅針盤である
横田尚哉
著者の横田尚哉です。
深いところまで、読みほぐしていただき、誠に有難うございました。
「俺と100冊の成功本」の読者にとてもわかりやすく紹介していただきました。
お蔭さまで、大好評となり増刷が決定しました。
発売2週間で、2万部を突破することができました。
> そもそもの機能に立ち返って考えるのが、ファンクショナル・アプローチです。
そうなんです。さすが、昔、たずさわっておられただけあって、理解が早いですね。
炭鉱は、よい例ですね。こっそりいただこうかな(笑)
有難うございました。今後とも宜しくお願いします。