『日本におけるプロレス団体のマネジメントに関する考察』石澤常光

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

本研究は、新日本プロレスに1992年に入門し、ヤングライオン杯に優勝、海外遠征、帰国後ケンドー・カ・シンとして活躍した、石澤常光氏による、リサーチペーパーである。

本論文は、早稲田大学スポーツ科学学術院論文集
早稲田大学大学院スポーツ科学研究科リサーチペーパー集2008からダウンロードできるので、参照されたい。指導教官は平田竹男氏である。

近年、日本のプロレス界の人気の凋落は目を覆うばかりであるが、海外のWWEや日本の格闘技興業においては、日本のプロレス界ほどの凋落は見られない。

本研究は、新日本プロレスの選手として活躍した著者が、自分の経験とも合わせ、プロレス団体のマネジメントを論じた貴重な研究内容となっている。

学術的な内容の中にも、中西学への愛情が随所にあふれていて、

その典型例ともいえるのが、五輪出場レスラーである中西の育成失敗である。中西とは、中西学という新日本プロレス所属のレスラーの事である。
経歴としては専修大学を卒業後、和歌山県庁にスポーツ指導員として勤務。その後バルセロナ・オリンピック・レスリング・フリースタイル 100kg級代表となり、オリンピック終了後プロレスに転向し現在に至る。

身長は 186cm、体重は120kgと、非常に恵まれた体格の持ち主である。五輪出場という経歴と体の大きさだけ見ると、プロレス界を代表するスーパースターになっていてもおかしくない逸材であった。しかし一度も新日本プロレスのシングルタイトルを獲る事も無く、中堅どころで甘んじている。

あたかも、中西学が中堅レスラーに甘んじているがために、警鐘として本論文を書いたのかと思うほどである。

(なお、中西学は本論文発表後にIWGPのベルトをデビューから16年6カ月、42才3ヶ月で初戴冠している)

謝辞にも

そして何より本研究は、新日本プロレス所属のプロレスラー、中西学氏の存在なくしては成り立たなかった。

とある。

本研究の大半は団体の運営についての内容であるが、なかにはファンには貴重な情報も散見される。
たとえば

またどんな試合を組むか決めるマッチメイクに関しては、新日本プロレスでは会社内のライセンス事業部の阿部氏、武田氏、菊池氏の 3 人。選手サイドから邪道氏、外道氏、レフリーのタイガー服部氏の 3 人。
合計 6 人がマッチメイクを担当している。ストーリー・ラインはこの 6人が中心となって行なっている。

とあるが、邪道、外道がマッチメイクを現在担当しているとは驚きである。

WWEとの収入の内訳の比較は興味深い。
新日本プロレスと比較して、比率として大きなものにPPVやコンシューマープロダクトののライセンス商品の売り上げが挙げられている。

ライセンス商品の売り上げに必要不可欠な要素として、「選手の魅力」が挙げられている。
そこで、オリジナリティ、キャラ、喋り、先駆者的、変革性の観点から選手の魅力を評価した表があるのだが…

往年のWWEの人気レスラー:ホーガン、オースチン、ロック、
往年の日本の人気レスラー:力道山、猪木、タイガーマスク
現在のWWEの人気レスラー:シナ、HHH、エッジ、テイカー、オートン、バティスタ、ジェリコ、ハーディー
現在の新日本の人気レスラー:永田、中西、天山、棚橋、後藤、真壁

うーん、対比して分析するのも、酷なような…


本研究の研究内容が、今後のプロレス界の人気の復興、発展に繋がるようにファンとしては祈っています。

新日本とWWEの決算書データの分析は、会計書の勉強ケーススタディとしてもおすすめです。


最近プロレスネタをチョコチョコ書いてたら、優しい方が本論文の存在を教えてくださいました。ありがとうございます。
情報は出せば出すほど集まると言うことを再認識いたしました。

今年の上半期で面白かったプロレス本と言えば
4796668063
プロレス 下流地帯 (別冊宝島 1599 ノンフィクション) (単行本)

ですね。WJの実録漫画の部分だけでも面白い。

あと、前々から、「プロレス用語でビジネス書を語る飲み会」みたいのをやりたいと思っているので、参加希望の方は何かの折に伝えてください。私のリストに加えておきます。現在、3人くらい希望者がいます。

・あの新刊も、あのアングルがなかったらどうだっただろうね。
・あの著者も、ギミックが通用するのも今のうちでしょ。
・今回のAmazonキャンペーンはブックがイマイチだった。
・あの書評家も、ジョブやワークが最近多くなってきたね
・雑誌の取材でセルを少しくらいは受けてくれないとなあ
・まあ、結局アレだな。
・ヴァー。正直スマンかった。
・僕には自分の未来が見えません。

こんな感じで、プロレスとビジネス書について語りたいなと。

オタク用語と言えば、こちらは調子いいみたいですね。

4887597134
現代オタク用語の基礎知識 (単行本(ソフトカバー))


プロレス用語は載ってないみたいですが…
あー、もはやオタク用語じゃなくて市民権を得ているのか。ツイてます!

comments powered by Disqus