googleの元CIO(最高情報責任者)が「情報整理術」をテーマに書いた本。もう、それだけでかなり期待大。しかも、この著者のダグラス・C. メリル氏は、生まれもって学習障害や失読症、それにともなう方向感覚の欠如といったハンディを抱えています。
しかし、そのハンディキャップを逆手に取り、「人間がどのように学習し、問題を解決していくか」という事に興味を持ちそれに関して研究し認知科学の分野で博士号を取得します。ポジティブですね。素晴らしい。
心理学で博士号を取得した後には、情報科学の分野も研究し、さらにgoogleに入社し最高情報責任者を務めます。かなり興味深い人生ですね。
そういう経歴の方が語る「情報整理術」は、目次を引用すると
●パート1 自分を客観的に見つめ直す
第 1章 自らの脳を探る旅
第 2章 どうしようもなく間違った現代社会の仕組みと向き合う
第 3章 自らの制約と向き合う
第 4章 目的を明確にすることが重要
●パート2 新時代の整理術を身に付ける第 5章 検索が重要なワケ
第 6章 検索技術をマスターする
第 7章 情報を目立たせるには
第 8章 紙とデジタルの使い分け
第 9章 電子メールを検索可能な"自分履歴"に変える方法
第10章 カレンダーをクラウドに保存すべき理由
第11章 文書とウェブ・コンテンツの整理
●パート3 大小さまざまな困難に打ち克つ
第12章 注意の散漫をなくし、仕事に集中する方法
第13章 仕事とプライベートを融合させる方法
第14章 想定外の出来事に対処する
第15章 まとめ
エピローグ 考えるな、滑れ!
筆者のお勧めツール
と、なっています。
どの章も、実際に普段困りそうで知りたいテーマですし、それをgoogleの元最高情報責任者が教えてくれるわけですから、興味深くないわけがない。
特に、僕は
第 8章 紙とデジタルの使い分け
第11章 文書とウェブ・コンテンツの整理
第12章 注意の散漫をなくし、仕事に集中する方法
第13章 仕事とプライベートを融合させる方法
第14章 想定外の出来事に対処する
の、あたりに興味津々。
読んでみたら、かなりGTD(Getting Things Done)の手法と相似してる部分が多い感じ。本書では、「整理術の原則」が20個まとめられてますが
1)脳の負担がなるべく少なくなるように、生活を組み直そう 2)なるべく早く、頭の中から情報を追い出そう 13)本当に記憶の必要な物事だけを記憶しよう 15)週一回、重要な情報を見直す時間を設けよう 18)文脈の変化を見越して、メモを取っておこう 19)文脈の似た仕事をまとめて行おう
などの項目をみると、GTDと似ているという印象にも同意していただけると思います。
下記の章は、googleの元最高情報責任者が語る
第 6章 検索技術をマスターする
第 9章 電子メールを検索可能な"自分履歴"に変える方法
第10章 カレンダーをクラウドに保存すべき理由
第11章 文書とウェブ・コンテンツの整理
google、gmail、googleカレンダー、googleドキュメントの使い方という感じで説得力があります。「あぁ、そういう風に使うためにこの機能があったのか...」と納得することしきり。
そして、デジタルバリバリで、「紙なんか使わないよ」と言うかと思いきや
第 8章 紙とデジタルの使い分け
では、それぞれのメリットデメリットを的確に分析し、適材適所な使い方を指南します。
意外なことに、著者は各種明細書・請求書等は「紙で郵便で」受け取っています。「寝返ったか!」などと思いそうですが、効率的に情報を整理することが目的で、デジタル化は手段でしかありませんから、紙が便利な場合には紙の方が良いですね。その辺の、目的と手段の主客転倒は避けたいところです。
タイトルの「情報整理」の部分だけでも相当に面白いのですが、やはり学習障害や失読症というハンディキャップを乗り越えて、逆にそこを研究し克服し、認知科学や情報科学の専門家になったという部分に感動。
本書の中の言葉を借りれば、「現実の制約と思い込みの制約」とのギャップという事になるんでしょうが、それにしても凄いなあ。
自分も「○○だから、これができない」「○○は、苦手だからできなくてもしょうがない」と思うこともありますが、そんな事で色々チャンスを逃してることも多々あるんだろうなあ。
情報整理術を学ぼうと思ったら、人生についても色々考えることが出来てお得でした。お得でしたと言えば、350ページ超のボリュームで1365円とかなり割安感。新書サイズで持ち運びにも便利です。
グーグル時代の情報整理術 (ハヤカワ新書juice) (単行本)
ダグラス・C. メリル (著), ジェイムズ・A. マーティン (著), Douglas C. Merrill (原著), James A. Martin (原著), 千葉 敏生 (翻訳)
子どもの頃から失読症でものを覚えるのに苦労している私は、どのようにして認知科学の博士号を取得し、グーグルのCIO(最高情報責任者)まで務めたのか。押し寄せる情報に対処するには、まずは社会や自分自身が課す制約をうまくかいくぐって、脳にストレスを与えないことだ。また、情報はクラウドに預け、整理するのではなくて検索する術を身につけること。いま世界が注目する情報の達人が、自らの体験を交えながら、「整理術の原則」を伝授。またGメールやグーグル・カレンダーなどの知る人ぞ知る活用法も公開する。